Cybotanic
新美リック(武蔵野大学附属千代田高等学院)
これは、植物と人間の間のコミュニケーションの媒体を確立することを目的に、植物の生体電位と人間の手の動きでテクノを共演するシンセサイザーです。自分が初恋の女性に振られて半狂乱になり、ハエトリグサに恋をし、植物に「好きです」が伝えられないことから植物とのコミュニケーションの不可能性に気がついて初めて植物が生きていることを再認識した経験や、アリストテレスが自身の「植物論」にて植物が動けないことから「魂を持っていない」と、形容されていたり、パスカルが「人間は考える葦である」と主張していることから、人間は植物を異質で無感覚なものだと扱ってしまっていることに気がつきました。この問題を解決するには、植物と人間の間で擬似的であれどコミュニケーションをとることで、人間がもっと植物を身近に感じて、「無感覚」「異質」と言った感情を取り払うことが重要だと感じた。最初は植物の生体電位から得れる情報を日本語に翻訳することによる、言語的コミュニケーションの開発を目指していたが、植物の意思を完全に読み取ることが不可能だと感じ、植物が音楽を弾いたら、何か思うものが変わるのではないか?と考え、生体電位を拾って、シンセサイザーをコントロールすことによって、植物が演奏することができるシンセサイザーを開発を始めた。
電子工作の経験はなかったが、このために身につけて勉強した上で取り掛かった。
しかし、シンセサイザーを開発しても、二つの問題点にぶつかった。まず、人間が演奏に関わないことから、人間側が受動的になってしまい、コミュニケーションとして成り立っていなかった。また、リズムもメロディも全くランダムなものが出来上がってしまい、「音」を「楽」しむことが全くできなかった。そこで、音楽教育を受けていない植物や人間でもリズムパターンを作り、メロディを鳴らし、一緒に一つの曲を作る体験を作ることができたら理想的な状態だと考えるようになった。まず、植物がリズムを演奏するためにユークリッドの互除法からリズムを生成する「ユークリッドリズム」と呼ばれるアルゴリズムの数値を植物の生体電位で操作させることによって、植物が有機的なリズムを奏でられるように設定した。また、メロディもペンタトニックスケールという音階に落とし込むことによって、人間が楽しめるメロディを展開できるようにした。そして、人間側は、KaguraといARを使ってwebカメラで認識された手の動きを感知して音を鳴らす楽器をシンセサイザーに繋げるインターフェースを作ることによって、女性でも男性でも楽器経験のない人でも植物とコミュニケーションをとることを可能とした。実際にこれを友人に試してもらったところ、「植物の見る目が変わった」とのコメントをもらった。今後はシンセサイザーの拡張などに時間を使っていきたい。